農村計画学会誌
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農村地域の自然立地的土地利用計画に関する基礎的研究
土地利用と自然立地条件の対応関係
新田 裕司
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1984 年 3 巻 1 号 p. 26-32,59

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抄録

土地の持つ自然的潜在力をできる限り有効に, しかも永続的に利用し, 自然の多様性を保持しつつ, 土地利用をすすめることは, 土地利用計画にとって最も基本的な課題である。とくに, 農村地域における土地利用は, 自然的立地条件に大きく左右されるために, 自然資源の有効な利用と, その保全を考慮した土地利用計画の策定が望まれている。そのためには, 土地利用と自然的立地条件の関連性や, それに起因する土地利用変化の特質を実証的に把握することが必要である。
本研究は, 農村土地利用計画における自然立地的土地分級の方法について考察する一連のものであり, 本報では土地利用と自然立地条件の対応関係を事例的に分析するものである。
本報では自然立地条件と土地利用との対応関係について, 次のような視点から事例研究を行った。
まず, 土地利用と自然立地条件はそれぞれ空間的階層性をもって把握できると考えられるので, 各レベルにおける対応のしかたを分析することによって, 土地利用に関する各計画レベルで把握すべき自然立地条件の空間レベルを見出すことができると考えられる。
また, 土地利用の種類によって自然立地条件の評価は異なり, 立地の選択のしかたや, 立地の性質によって許容できる土地利用には違いがあると考えられる。このような土地利用の立地選択性と立地の土地利用許容性は, 自然立地条件と土地利用の関係を分析する場合の基本的な視点である。
さらに, 自然立地条件と土地利用との関係において, 土地利用の安定性は計画的立場からは重要な視点であると考えられる。
本研究では以上3つの観点から対象地域での土地利用と自然立地条件の対応について事例的に分析する。
土地利用と自然立地条件はそれぞれ階層性をもってとらえられるが, 本報では市町村レベルと集落 (旧村) レベルの2つのレベルを設定し, 市町村レベルでは土地利用と自然立地条件の対応関係を概括的に分析して, それをもとに集落レベルでの対象地域を性格づけることを主な目的とし, 集落レベルでは旧村程度の地域空間を対象とし, 土地利用と自然立地条件をより詳細に分析することを目的とした。
自然立地条件の空間レベルについては地形を基準とし, 市町村レベルでは中地形レベル, 集落レベルでは小地形レベルおよびそれを細区分したレベルとした。
自然立地条件を分析する際に行う立地単位区分は, 地形区分をもとにして, 土壌を付加的要因として用いた。地形と土壌は生成論的に密接な関連を持つので, 両者の生成論的関連性に留意しつつ地域の区分を行った。
本研究の事例調査は長野県茅野市で行った。市町村レベルでは同市の全域を対象とし, 集落レベルでは玉川西部地区を対象とした。茅野市は諏訪盆地の東に位置し, 八ヶ岳, 蓼科山などの火山の山麓部に成立している。面積266km2, 人口は約44, 000人で, 農業的土地利用が多く, 背後に観光地を控えた地方都市である。また玉川西部地区は面積6.7km2であり, 農業的土地利用が主体をなしているが, 近年都市化も進行している。
ここで行われた一連の研究は, 信州大学農学部亀山章助教授, 農業土木試験場石田憲治氏との共同研究としてすすめられたものであるが, 本報は主として著者の研究成果になる部分である。研究をすすめるのに際して御助言をいただいた東京大学農学部緑地学研究室の北村文雄教授, 井手久登助教授, 東京都立大学理学部地理学教室の武内和彦助手, および現地調査と分析作業に御協力いただいた方々に深く感謝の意を表したい。

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