抄録
過度な広告宣伝の抑制と過小な広告宣伝による機会損失の防止を目指し,本研究では鑑賞者の印象を反映させた映画ポスター色変換手法を提案した.鑑賞前後における印象のギャップを軽減することにより,本来の作品評価が行える仕組みを提供することが目的である.鑑賞者の印象を色で表現するにあたり,感情をもとにした内面的な性質や状態を表す形容詞と,心理的に色彩経験を捉える代表色130色を関連付けた色彩データベースを拡張し,映画レビューの色彩化とポスターへの適用を行った.本手法の評価では,被験者50名に対し,映画製作会社が作成したポスターの提示と,本手法により生成されたポスターの提示を比較し,鑑賞前後の印象を表す期待度と満足度,および,作品評価への影響を検証した.対象作品は,映画コミュニティサイトにおける低評価作品2つと高評価作品3つである.本手法により生成されたポスターを提示することにより,(1)低評価作品は,期待度を一定の水準を保ちながら,満足度および作品評価を上げることができる(2)高評価作品は,満足度と作品評価を一定の水準を保ちながら,期待度を上げることができることを確認した.