芸術科学会論文誌
Online ISSN : 1347-2267
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一般論文
AIによるアートスタイルの学習と心理実験によるその評価
マイ コンフン中津 良平土佐 尚子楠見 孝
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2022 年 21 巻 3 号 p. 123-135

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抄録
本論文は、AI特に最近の技術であるGAN(Generative adversarial network)と心理実験を組み合わせることによって、アートの分析の問題にアプローチする新しい方法論を提案することを目的としている。さらにその方法論を用いて、東洋/西洋の具象/抽象アートに対する印象の相違点・類似点および筆者の一人である土佐尚子が制作したアートの位置付けを明らかにするという課題に取り組んだ。具体的には、画像セットとして、花の写真セット(A)、西洋印象画の画像セット(B1)、西洋抽象画の画像セット(B2)、中国の具象画の画像セット(B3)、土佐が制作したアート画像セット(B4)、を用意した。GANを使用してAからBのそれぞれへの変換を行い、作家やアートジャンルが匿名化された4つの画像セットが得られた。得られた4つの画像セットを使用して、23人の学生からなる被験者に質問票に記入してもらう心理実験を行った。得られたアンケートを分析したところ、以下のことがわかった。西洋・東洋を問わず抽象絵画と具象絵画は異なると判断された。西洋と東洋の具象絵画は類似していると判断された。土佐のアート画像は、西洋の抽象絵画と類似していると判断された。これらの結果は、AIを分析ツールとして使用して、特定のアーティスト・アート作品・アートジャンルに対して被験者が持つ事前知識によって引き起こされるバイアスなしに、アートスタイルの違いの評価が行えることを示している。
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