2023 年 35 巻 p. 60-70
【目的】当院理学療法開始時よりPusher現象を認め,座位保持困難であったくも膜下出血術後の症例に対し,垂直性の認知的歪みと身体機能の両面を考慮し介入した結果,Pusher現象が改善,座位保持能力が向上したため報告する。
【対象】発症後の経過で左片麻痺,麻痺側体性感覚鈍麻,非麻痺側筋力低下,右動眼神経麻痺,全般性注意障害を認めた70代女性。
【方法】垂直性の認知的歪みと麻痺側・非麻痺側の身体機能の改善を図るため,姿勢アライメントや外部環境を調整し感覚入力・統合を促し,身体垂直軸の再学習と左右対称的な姿勢に基づき行う運動のなかで適切な筋活動を促通した。
【結果】Pusher現象改善,座位保持能力向上に伴い,移乗介助量も軽減した。
【結語】姿勢アライメントや外部環境の調整により,自己の身体状況に対する気づきが増加した。知覚-運動ループが円滑化され,ボディイメージ・身体図式の再構築により運動学習が効率的になされ,Pusher現象の改善と座位保持能力が向上した。