2024 年 36 巻 p. 1-6
【目的】大腿骨近位部骨折術後の急性期の認知機能と身体機能の関係性についての研究はあまり散見されない。今回,大腿骨近位部骨折術後,急性期患者の認知機能と身体機能の関係性を,認知機能はAbbreviated Mental Test Score(以下,AMTS),身体機能はShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)を用いて検討した。
【方法】対象は,大腿骨近位部骨折の手術を受けた患者38例とした。AMTSを用い,認知障害群と正常群の2群に分け,身体機能はSPPBを測定し, 2群間でそれぞれ比較した。
【結果】SPPBの合計点数は,認知障害群で有意に点数が低かった。SPPBのバランス点数でも,認知障害群で有意に点数が低かった。SPPBの歩行と起立着座点数では有意差なしだった。
【結論】SPPBの合計点数やバランス点数では急性期から認知障害群の身体機能低下が示されていたが,歩行と起立着座では有意差がなかった。先行研究から,認知障害群は長期的には有意に歩行能力や起立着座能力が低くなることが予測される。したがって,今回本研究で示されたバランス能力低下に対するアプローチや,歩行や起立着座の能力差が認められない急性期から認知障害に対応した個別の理学療法を行う必要性が示唆された。