【目的】腰髄損傷後不全対麻痺患者が歩行不能から独歩獲得に至った理学療法介入の経過を報告し,理学療法実践の一助とする。
【対象と方法】症例は40代男性で,X日:二階から転落し第二腰髄損傷および不全対麻痺と診断された。X+13日: 脊椎の後方固定術が施行され,X+62日:ADL向上を目的に回復期病院へ転院した。不全対麻痺により立位保持が困難で,膝装具を用いた後方介助歩行でも平行棒内の前進に難渋した。X+63日:懸架式歩行器を用いた免荷歩行練習を開始した。体重の 25%程度を免荷した平地歩行を反復し,歩行条件を段階的に免荷なし,装具なし,杖なしへと移行した。
【結果】脊髄損傷の重症度について, ASIA Impairment Scale(以下, AIS)は初回評価・最終評価ともDであったが,International Standard for Neurological Classification of Spinal Cord Injury(以下, ISNCSCI)での運動機能は左下肢の Key muscleでスコアが向上した。歩行状況についてWalking Index for Spinal Cord Injury(以下, WISCI)はX+63日:3点であったが免荷歩行練習中のX+75日:13点に改善し,X+135日:20点満点に到達した。最終的に独歩を獲得し,X+141日:自宅退院した。
【結語】不全対麻痺患者に対する免荷歩行練習は独歩獲得に寄与する可能性がある。