女性学年報
Online ISSN : 2434-3870
Print ISSN : 0389-5203
発達障害とジェンダー/フェミニズム
ふたつの当事者性から考えてみる現在地
松本 澄子
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2021 年 42 巻 p. 3-26

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抄録

わたしには、発達障害のある子どもが2人いる。わたしは20代でフェミニズムや女性学を知り、1978年に日本女性学研究会に入会した。その後、おぼろげながらも「フェミニズム」というアイデンティティがあって、そこに、30代で、(ある意味いやおうのない)「障害のある子どもの母親」というアイデンティティが発生した。子育ての過程や、「親の会」や学校など地域で活動する中で、「発達障害のある当事者」である子どもの代弁者であること、かつ「親当事者」であることのいろいろな意味での経験知を獲得し、発言・発信もしてきた。そして発達障害とフェミニズムやジェンダーとの接点を模索し、「女性と発達障害」について考える中で「発達障害のある女性」という領域にもジェンダーの視点を向けるようにもなった。
 本稿では「発達障害とジェンダー」に関わる問題意識について、「女性」という当事者性からは「発達障害のある女性とジェンダー/フェミニズム」に焦点を当て、また「わたし=親当事者」ということからは「発達障害のある子どもの子育てとジェンダー/フェミニズム」に焦点を当てて、わたしの現在地としての考察を試みている。特に、フェミニズムの「自己選択・自己決定」「自己実現」「ジェンダー平等」という理念と、「発達障害のある女性当事者」及び「障害のある子どもの母親当事者」の葛藤(渦巻きの渦中にあること)を言語化してみることで、次の「何か」、「わたし」からのフェミニズム=女性「解放」とは「何か」をさぐるきっかけとしたい。

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© 2021 日本女性学研究会『女性学年報』編集委員会
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