女性学年報
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最新号
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  • 2024 年 45 巻 p. 1
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2024 年 45 巻 p. 2
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 「女性」としての困難に着目して
    水谷 千景
    2024 年 45 巻 p. 3-25
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿は、我が子の不登校を経験した母親を対象に、家庭での経験や学校・地域など社会との関係性においていかなる困難を抱えているかについての実態を描き、それを筆者自身の当事者性をもとに、「女性」としての側面から考察するものである。対象者の事例を筆者自身の経験と合わせて分析した結果、母親たちが抱える困難の特徴は以下の通りである。

     まず、母親たちは、自責の念にとらわれながら、学校に通わせて当然という母親に求められる社会の規範にも苦しめられ、地域から孤立している側面が確認できた。また周囲の人間関係においては、身近な母親から子育てを批判的に捉えられていたほか、家庭での受け入れ方に対する周囲の無理解に苦しむなど、理解者の不在に直面していることが読み取れた。家庭内においては、夫は父親として我が子の不登校問題に積極的に介入する姿勢を見せず、学校との交渉や精神面・生活面のケアなどは妻である母親が多くを引き受け、その結果、母親の就労も不安定にしている点など夫の不在が問題となっていた。最後に、学校との関係においては、「(自宅にいては)社会性が身につかない」「ひきこもる」と教師からの一方的な言葉に傷つけられていたほか、「女性」教員からの「子育て批判」を通じて、学校から疎外される経験となっていることが示された。

     以上から、筆者自身の当事者性ゆえに新たに可視化された知見とは、不登校児の母親たちが抱える問題は、我が子の不登校という事態そのもの以上に、社会や家庭から「女性」だけが求められる母親としてのジェンダー役割であった。そしてその背景には育児・教育責任を母親に帰属させるジェンダーを内在化した社会のまなざしが存在することを明らかにした。その結果、本稿は、母親たちが「不登校の子どもをもつ母親」という地域や学校といった社会の枠組みにおいてのマイノリティとしての存在であると同時に、家庭内においても母親役割という「女性」としての不均衡を引き受けるマイノリティとしての存在でもあることを指摘した。我が子の不登校によって二重のマイノリティとして生きる母親の困難は、不登校問題が学校教育の枠組みだけでは捉えきれない、現代の女性と教育を象徴する問題であることを示唆している。

  • ひとり親の女性の語りから生きづらさの要因を探る
    西川 由紀
    2024 年 45 巻 p. 26-44
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
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    本稿は、ひとり親が抱く生きづらさを他者と接するという視座から照射し、生きづらさを生じさせる要因を明らかにするものである。ひとり親の女性の生きづらさに関する研究には、経済的資源の欠如の観点から学歴や就労と生きづらさを接合したものが積み重ねられてきた。他者との関わりのなかで生じる生きづらさに関してもひとり親やひとり親世帯の子どもの声が蓄積されてきた。一方で、ひとり親の女性の生きづらさに関する経験と語りには、その多様性がゆえに散在した状況があり系統立てる必要性が指摘されている。本稿では、ひとり親の女性の語りを「つながりの確認」「存在価値の証明」の観点から分析し、「ひとり親に関する負の先入観に対して抵抗を示す」「いるはずの家族がいないことで子どもの心情を憂慮する」「ひとり親であることを申し訳ないと思う」「逸脱者に向けられるまなざしから逃れる」の4つが析出された。系統立てを意識しつつ、これら4つのカテゴリーを生きづらさの要因が身体の外部にある「外在的な生きづらさ」、身体の内部にある「内在的な生きづらさ」に整理した。外在的な生きづらさの要因として、ふたり親というマジョリティから少数者化、マイノリティ化されるがそれにあらがえない状況があり、内在的な生きづらさの要因として、周囲から向けられるまなざしや言葉とひとり親の女性自身が持つ意識との間に隔たりがあるといえる。ひとり親の女性は、これら二重の生きづらさを他者との関わりのなかで負うことになると考えられる。さらには、外在的な生きづらさと内在的な生きづらさの変化の速さが異なることに、ひとり親の女性は直面し、自身の意識が追い付かないままにひとり親として振舞うことになる。本稿は、相も変わらずひとり親の女性の生きづらさを生み続けようとする構造を変える兆しのない日本社会への筆者のクレーム申し立てである。
  • 新聞『家庭労働者』から読み解く
    姜 喜代
    2024 年 45 巻 p. 45-72
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
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     1970年代、家事労働に賃金を要求する運動はフェミニズムの争点の一つであった。本論考では、その運動をイタリアで展開したマリアローザ・ダラ・コスタと家事労働賃金要求委員会が発行していた新聞『家庭労働者』の創刊号からいくつかの記事を紹介する。そしてこの運動が掲げた労働概念の拡張と、闘いによる女性の解放を目指したダイナミズムを明らかにすることを第一の目的とする。

     日本でダラ・コスタは「マルクス主義フェミニスト」であり、「家事労働論者」としてのイメージが定着してしまっているが、彼女と運動体が起こしたこの運動は、当時のイタリア・フェミニズム最大の懸案の一つであった中絶の合法化を求める運動や婦人科医学の知識と情報を女性に戻すための対抗的情報センター作り等、女性が身体の自律性を取り戻すための多様な運動の結節点になっていたことを明らかにし、ダラ・コスタの運動家としての面貌を浮き彫りにしようと試みた。

     彼女と運動体が国に求めた家事労働者への直接の賃金支払いは結局実現しなかったし、1970年代に勝ち取られた中絶の自由という女性の身体の自律性は今日も多くの国で政治の争点となっている。女性に家事や育児、介護労働を安く負担させて搾取しようとする国や資本の企みは昔も今も変わっていないため、女性の連帯と闘いがなければ女性の身体の自律性はいつ何時でも奪われてしまう。ゆえにダラ・コスタたちが1970年代に展開した女性の身体の自律性をかけての壮絶な闘いは依然として多くの再生産労働の負担を抱えながら生きる現代の女性たちに自律的に生きるためのヒントを与えてくれる。

  • 洛陽市の陳氏太極拳教室を事例として
    範 麗娟
    2024 年 45 巻 p. 73-93
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
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     本稿の目的は、現代中国において中高年女性がなぜ伝統太極拳に向かうのかを解明することである。その背景には、健康寿命の延長と生活の質の向上のために、スポーツ参加がますます重視されているという社会状況がある。この状況のもと、一部の中高年女性は愛好するスポーツとして伝統太極拳を選択している。本稿は、洛陽市に所在する陳氏太極拳教室を事例として質的調査を行うことで、この選択の理由を解明する。

     その結果、次のことが明らかになった。第一に、伝統太極拳を愛好する女性たちは中間層に属しており、低階層の中高年女性が中心となっている広場ダンス(公共の広場で音楽をかけて踊る集合的なダンス)からも、若者向けのフィットネスからも排除されており(自主的に退出する場合を含む)、自身の価値観に合致する活動として伝統太極拳を選択しているということである。第二に、女性たちは伝統太極拳の実践者であることがもたらす文化的価値観及び社会的意義を家族に認識させ、家庭内での自身の地位を向上させている。これは、伝統的な家庭観念のもと、妻、母、娘といった複数の役割を担い、多くの負担を引き受けている女性たちにとってきわめて重要な意味を持つ。第三に、女性たちは老後の展望として、自分の年金を使って伝統太極拳を実践することによる自己実現を追求している。これは、家庭内での複数の役割から完全に「卒業」することではないものの、家事労働と社会労働の「二重の役割(負担)による緊張」の解消という点でも注目に値する。

     以上の三点より、中間層の中高年女性にとって伝統太極拳とは、単なる健康増進の手段にとどまらず、社会的には自己を差別化し、家庭においては自己の地位を向上させ、自己実現を果たすための手段でもあることがわかる。したがって、陳氏太極拳という伝統文化は、現代におけるジェンダー的および階層的なニーズに応えているといえよう。

  • 新警察法(1954年)施行後の「少年警察」の展開と東京母の会連合会の動きを踏まえて
    中山 良子
    2024 年 45 巻 p. 94-113
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
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     1956年に生じた「太陽族」の社会問題化を当時の〈青少年〉をめぐる統治の側面から捉えなおす。1956年7月、補導された〈青少年〉の性的なありよう(桃色遊戯など)が新聞記事において「太陽族」として繰り返し言及された。当時、青少年問題協議会などでは「青少年に有害な出版物、映画等」の悪影響が盛んに語られていたが、青少年問題協議会に深くかかわる東京母の会連合会は、その影響を危惧し「太陽族映画」へ抗議の声をあげ、また「「太陽族」とよばれる若い人たちの生態」に対し深い懸念を示していた。同じ時期の婦人雑誌では「青少年の“不純異性交遊”」をめぐって、「家庭の不注意」までもが問題視されていた。

     しかしながら、補導された〈青少年〉の増加は、講和発効後の青少年問題協議会の変質、1954年の新警察法の施行と「少年警察」の変化および暴力対策の強化に起因したものである。青少年問題協議会は「非行をなす虞のある青少年」に対する取り組みを許容し、1954年の「少年警察の運営について」は占領期とは異なる「非行の防止」「犯罪の予防」を目的とした警察の営為を可能としていた。〈青少年〉の異性愛に関するセンセーショナルな語りは、これら青少年問題協議会や警察の変質を見えにくくさせていた。結果的に「太陽族」の社会問題化は、問題の〈青少年〉への言及を介して、〈青少年〉のセクシュアリティ(異性愛)のありようを規範化し、「正しい」〈青少年〉をも構築していった。

  • 差別の代償を認識し、インターセクショナルな視点を強化するために
    遠山 日出也
    2024 年 45 巻 p. 114-137
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
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     社会運動や研究においてインターセクショナルな視点を強化するためには、その一つの方法として、マイノリティの解放はマジョリティ自身の解放にも結びついていることを理解することが有用である。フェミニズムをめぐっては、マルクス主義フェミニズムの統一論によって新自由主義/資本主義と家父長制との結びつきを捉えることが有効だが、より一般的に言えば、具体的に個々のマイノリティ解放のマジョリティ解放との結びつき――換言すればマイノリティ差別のマジョリティにとっての代償を捉えることが必要である。

     筆者は以前、女性差別の男性にとっての代償を明らかにすることを試みたが、本稿では性的マイノリティ差別、セックスワーカー差別、人種差別という3つの差別について、それぞれマジョリティ側が支払う代償について、英米での研究などをもとに明らかにする。また、以上の4つの差別のケースをもとに、マジョリティが差別の代償を払う理由について、より一般的な形でまとめる試みもおこなう。その中から、フェミニズムにおけるインターセクショナリティは、マジョリティ女性自身のためにも必要であることも浮かび上がる。

     フェミニズムからトランスジェンダーやセックスワーカー運動の排除を主張する森田成也は、「99%(みんな)のため」という言葉に示されたインターセクショナルな考え方を曲解しているうえ、フェミニズムのためにも人種差別などにも反対する必要があることを理解していない。また、彼のマルクス主義フェミニズムの統一論を否定する論理は、私的家父長制を擁護する宗教右派らの議論とフェミニズムとを区別できない枠組みであり、現実からも離れている。

     以上より、資本主義と家父長制との結びつきを捉え、マイノリティ解放のマジョリティ解放との結びつき(マイノリティ差別のマジョリティにとっての代償)を認識することは、インターセクショナルな視点を強化し、フェミニズムからのマイノリティ排除を防ぐために有効だと言える。

  • (〈声〉がひらく叙述の地平をみわたすために:山家悠平さん著『生き延びるための女性史』書評特集① 緒言)
    牧野 良成
    2024 年 45 巻 p. 138-142
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 書評 山家悠平『生き延びるための女性史:遊廓に響く〈声〉をたどって』
    松永 健聖
    2024 年 45 巻 p. 143-146
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 山家悠平『生き延びるための女性史:遊廓に響く<声>をたどって』を読む
    森川 麗華
    2024 年 45 巻 p. 147-151
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • おさまりの悪い歴史、そして経験
    栗田 隆子
    2024 年 45 巻 p. 152-157
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2024 年 45 巻 p. 158-159
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 『女性学年報』第45号編集委員会
    2024 年 45 巻 p. 160-163
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2024 年 45 巻 p. 164
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2024 年 45 巻 p. 165-166
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2023年12月~2024年11月
    2024 年 45 巻 p. 167-168
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2024 年 45 巻 p. 169-170
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 『女性学年報』第45号編集委員会
    2024 年 45 巻 p. 171
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2024 年 45 巻 p. 172
    発行日: 2024/12/28
    公開日: 2025/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
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