女性学年報
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マイノリティの解放とマジョリティ自身の解放との結びつきを捉える
差別の代償を認識し、インターセクショナルな視点を強化するために
遠山 日出也
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 45 巻 p. 114-137

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抄録

 社会運動や研究においてインターセクショナルな視点を強化するためには、その一つの方法として、マイノリティの解放はマジョリティ自身の解放にも結びついていることを理解することが有用である。フェミニズムをめぐっては、マルクス主義フェミニズムの統一論によって新自由主義/資本主義と家父長制との結びつきを捉えることが有効だが、より一般的に言えば、具体的に個々のマイノリティ解放のマジョリティ解放との結びつき――換言すればマイノリティ差別のマジョリティにとっての代償を捉えることが必要である。

 筆者は以前、女性差別の男性にとっての代償を明らかにすることを試みたが、本稿では性的マイノリティ差別、セックスワーカー差別、人種差別という3つの差別について、それぞれマジョリティ側が支払う代償について、英米での研究などをもとに明らかにする。また、以上の4つの差別のケースをもとに、マジョリティが差別の代償を払う理由について、より一般的な形でまとめる試みもおこなう。その中から、フェミニズムにおけるインターセクショナリティは、マジョリティ女性自身のためにも必要であることも浮かび上がる。

 フェミニズムからトランスジェンダーやセックスワーカー運動の排除を主張する森田成也は、「99%(みんな)のため」という言葉に示されたインターセクショナルな考え方を曲解しているうえ、フェミニズムのためにも人種差別などにも反対する必要があることを理解していない。また、彼のマルクス主義フェミニズムの統一論を否定する論理は、私的家父長制を擁護する宗教右派らの議論とフェミニズムとを区別できない枠組みであり、現実からも離れている。

 以上より、資本主義と家父長制との結びつきを捉え、マイノリティ解放のマジョリティ解放との結びつき(マイノリティ差別のマジョリティにとっての代償)を認識することは、インターセクショナルな視点を強化し、フェミニズムからのマイノリティ排除を防ぐために有効だと言える。

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© 2024 日本女性学研究会『女性学年報』編集委員会
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