人類學雜誌
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弥生時代以降の本土日本人における頭骨の非計測的小変異の出現型
百々 幸雄石田 肇
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1992 年 100 巻 4 号 p. 417-423

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抄録

頭骨の非計測的小変異の出現頻度を縄文,弥生,古墳,鎌倉,室町,江戸および現代の7集団にっいて比較した.弥生人資料の出自は北部九州であるが,それ以外の資料は全て東日本に由来する(Table 1).比較した小変異はこれまで我々が指標としてきた22項目である.各集団における出現頻度はTable 2に示した.
出現頻度の差をフィッシャーの直接確率計算で検定すると,縄文人と弥生人の問では22組中9組に5%水準で有意差がみられたのにたいして,弥生時代以降の集団間の比較では110組中5組にしか有意差が認められなかった(Table 2). 22項目の小変異の出現頻度をもとに7集団の問でスミスの距離(MMD)を算出したところ,縄文人とそれ以外の集団とのMMDは全て統計学的に有意であったが,弥生一古墳,古墳一鎌倉,鎌倉一室町,室町一江戸および江戸一現代のMMDに有意差はみられなかった(Table 3). MMDの現代日本人からの偏差をFig.1に, MMDの主座;標分析の結果をFig.2に示したが,いずれの図でも,弥生時代以降の集団が一群となるのに対して,縄文人はそれらから遠く離れている.
これらの結果から判断すると,頭骨の非計測的小変異の出現型は日本本土では,弥生時代から現代までの約2,000年間にわたって基本的には変化していないと考えて良さそうである.また,少なくとも小変異の出現型からみる限り,弥生,古墳,鎌倉,室町,江戸の各時代および現代の資料は同一集団から抽出した標本とみなして差し支えないと思われるので,北部九州のいわゆる渡来系弥生人は現代本州日本人の直系の祖先集団のつであった可能性が高い.

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