理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-086
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理学療法基礎系
足底板を用いた足底への圧刺激量の変化が立位および歩行に及ぼす影響
由利 郁理木村 倫子寺田 秀範山本 紗織池田 由美
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抄録
【目的】立位姿勢制御の過程では足底圧感覚情報が重要であるとされているが、足底圧感覚の歩行への影響について言及した報告は少ない.そこで今回は足底板を使用し、足底圧感覚情報が静止立位重心動揺および自由歩行に及ぼす影響について検討することを目的とした.

【方法】対象はヘルシンキ宣言に則って本研究の主旨を説明し、承諾を得た健常成人女性12名をとし、平均年齢は21.4(20-23)歳であった.足底板は突起なし(A)と、5×5×3mmのゴム製突起を1cm間隔に配置したもの(B)の2種類を使用し、1)立位重心動揺、2)自由歩行の順に測定を行った.1)ではアニマ社製重心動揺計GS-11を用い、開眼と閉眼時の閉脚立位重心動揺を60秒間測定した.評価項目は総軌跡長、単位軌跡長、単位面積軌跡長、外周面積、矩形面積、実効値面積、左右および前後方向動揺平均中心変位とし、各項目について、AとBそれぞれの開眼と閉眼の4条件(以下A開眼、A閉眼、B開眼、B閉眼)を比較した.2)では3次元動作解析装置(VICON370)を用い、自由歩行の1歩行周期における床反力、両側外果、第2仙椎(S2)の動きを測定した.外果の動きから歩行周期、歩幅、歩行速度、歩隔を算出した.またS2が立位での重心位置にあたると仮定してS2の左右方向の移動距離を算出し、歩隔で正規化した.床反力は前後、左右、鉛直分力を体重で正規化し、前後と鉛直分力は各ピーク値を、左右分力は内向き分力の波形と基線で囲まれた部分の積分値を算出した.統計処理にはSPSS(Ver.15)を用い、有意水準は5%未満とした.

【結果】1)単位面積軌跡長〔1/cm〕の平均値±標準偏差はA開眼、A閉眼、B開眼、B閉眼の順に29.69±13.23、27.06±8.71、25.34±7.05、27.69±7.44であり、A開眼と比較しB開眼で優位に減少した(p<0.05).総軌跡長、単位軌跡長、外周面積、矩形面積では足底刺激の違いに関わらず、開眼と閉眼による差のみ認められた(p<0.01).2)歩行周期変数、S2の左右動揺距離、床反力の全ての項目においてA-B条件間で有意差は認められなかった.

【考察】単位面積軌跡長において足底刺激の違いによる差が開眼時のみに認められた.閉眼時では足底刺激の有無に関わらず足底に自然と注意を向けて姿勢制御を行っており、足底感覚に問題のない健常人では足底刺激の影響が少なかったことが考えられた.これに対し、開眼では視覚情報が加わるために閉眼と比べて足底に向けられる注意が減少し、この状態では足底板Bによる足底圧感覚情報が姿勢制御に影響を与えたことが考えられた.一方、歩行パターンは中脳歩行誘発野から脊髄に至る中枢神経系のcentral pattern generatorによって生成されているといわれており、健常人においては、今回用いた足底に対する刺激強度では、このようなダイナミックな制御に組み込まれ、修飾系としての感覚情報の影響が希薄であることが考えられた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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