人類學雜誌
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日本における血清 α1-antitrypsin の変異
原田 勝二尾本 恵市
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1970 年 78 巻 1 号 p. 22-30

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抄録
血清中の主要な protease-inhibitor である α1-antitrypsin には pH 4.95の不連続 buffer system を用いた澱粉ゲル電気泳動により,多型性変異が検出される (Pi-system: FAGERHOL, 1967).
日本における各表現型の分布を調べる目的で,東京(134名),北関東(659名),北海道日高(和人180名,アイヌ系239名)の血清試料の他,比較のために白人(263名)の試料を検査した. FAGERHOL(1968)は17種類の表現型を記載しているが,今回の調査では日本人集団で5種類 (MM 96.8%, MF 2.5%, MS 0.5%MX 0.1%, FF 0.1%),アイヌ系集団で3種類(MM 95.8%, MF 3.8%, MS 0.4%),白人集団で6種類(MM 91.1%, MF 4.2%, MS 3.1%, FF 0.8%, FS 0.4%, MX 0.4%) が同定された.尚, BUNDYet MEHL(1957) の方法に基き,trypsin inhibiting capacity を測定したとてろ,日本人,アイヌ系,及び白人の各集団間では有意の差は見られなかったが,日本人及び白人の集団で活性値が著るしく低いものでα1-antitrypsin defcient type と思われるものも数例みられた.
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© 日本人類学会
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