人類學雜誌
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森林棲チンパンジーで観察された肉食行動
鈴木 晃
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1971 年 79 巻 1 号 p. 30-48

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抄録
霊長類の肉食に関しては,ヒト,原猿類を除くと,ヒヒ(WASHBURN & DEVORE,1961a,1961b;DART,1963;DEVORE & HALL,1965),およびチンパンジー(GOODALL,1963a,1963b,1967;KAWABE,1966;SUZUKI,1966;NISHIDA,1968)について報告がなされている.従来の肉食の観察は,いずれもサバンナ地域あるいはサバンナに隣接した地域での観察にもとつくものであり,チンパンジーについても,森林地域での肉食の例は観察されていなかった.(REYNOLDS 1967)
筆者は,東アフリカ,ウガンダのブドンゴの森で,1967年5月から17カ月間にわたってチンパンジーの生態学的研究をおこなったが,この森にすむチンパンジーについて,肉食を3例観察した.その2例は,若いブルーモンキー(Cercopithecus mitis)と,若いシロクロコロブス(Colobus polykomos)であった.他の1例は,生まれて間もないチンパンジーであったことは,注目にあたいする.肉食行動をめぐっては,集団による捕獲,生肉の所有者に対しての他個体による物乞い行動,その分配,その運搬等,ホミニゼーションについて考察する上で重要な意味をもつと考えられる多くの行動が観察された.
また,この観察によって,チンパンジーの肉食行動は,従来考えられていたサバンナ地域のチンパンジーに見られるばかりでなく,森林棲チンパンジーにも見られる行動であることが明らかになった.
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