抄録
当院における呼吸不全949例のうち慢性呼吸不全例について病態, 経過, 予後を中心に検討しその特徴をまとめた. 慢性呼吸不全は27.3%を占め, その60.4%がPaCO2>45TorrのII型である. 死亡率は53%で急性呼吸不全例 (24.2%) に比して高い. この予後の悪い病態は死亡率がI型とII型で差を認めないこと, 増悪時のPaO2の平均が43.0Torrで急性呼吸不全例の52.3Torrより有意に低いこととから, 持続する低酸素血症が関与するものと考えた. 増悪の原因は肺・気道感染と心不全で75%を占め, そのまま死因につながる傾向が強く, これも予後を悪くする―因である. 慢性呼吸不全の基礎疾患として頻度が高い肺結核, 慢性肺気腫, 慢性気管支炎, 特発性間質性肺炎及び肺癌は個々の疾患毎に慢性呼吸不全後の予後を異にする. これは多臓器障害をみる臓器と障害の程度, 合併症の有無・種類, 急性増悪や死亡の原因などが疾患により異なることから理解できる.