抄録
筆者は上顎中切歯近心舌側捻転の成因等を研究するために,日本人とPashtunの資料について観察および捻転角度を計測し,種々な項目との相関関係を統計的に調査した。その結果,1.日本人の上顎中切歯捻転角度はPashtunのそれより有意に大きく,近心舌側捻転の出現頻度もPashtunよりも高率を示す。2.上顎中切歯近心舌側捻転の成因については(a)顎骨の大きさに対して歯が相対的に大きく,萠出余地の不足のために生ずることの多い叢生とは同じカテゴリーのものではない。(b)近心舌側捻転は局所的環境的因子によって生ずるというよりもむしろ歯列弓の形態と関連する遺伝的因子が働らいているように思われる。