人類學雜誌
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頭蓋底と頭蓋冠の諸測度の加齢的変化について
大槻 文夫Debabrata MUKHERJEEArthur B. LEWIS
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1982 年 90 巻 3 号 p. 239-257

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抄録

Fels の縦断的発育研究の参加者(0-18才の男子220名,女子177名)を対象とした頭部側面X線フィルム(男子1861,女子1401)を用いて,頭蓋底と頭蓋冠の諸測度を計測した。
この研究に用いた頭蓋底の測度は次の通りである: cranial base (nasion-basion); anterior Cranial base (nasion-sella), fronto-ethmoidal segment (nasion-sphenoethmoidale), presphenoid segment (sphenoethmoidale-sella); posterior cranial base (sella-basion), basisphenoid segment (sella-sphenooccipital), basioccipital segment (sphenooccipital-basion).頭蓋冠については全て内頭蓋点を 用い,頭蓋最大高(sella-vertex)と頭蓋最大長(anterior-posterior)を計測した。その他頭蓋底の発育の 相対的な方向を知るために,次の角度を測定した: nasion-sella-basion, sella-nasion-point A, nasion-sella-posterior nasal spine. 各測度について,平均値の年齢的変化を性別に記述した。統計学的な有意性の検定には,全資料を3つの年齢群(0-3,4-6,7-18才)に分けた後,それぞれの群内で性別に回帰分析を行った。なお,この年齢区分は頭蓋底の軟骨結合部のおよその癒合ないしは閉鎖時期等に照し合わせて行ったものである(OHTSUKI, MUKHERJEE, LEWIS and ROCHE, 1981),従来の結果と相違するものとしては,男女とも斜台 clivus の発育にさいし, basisphenoid と basioc-cipital の両部分がともに寄与していることである。また,∠SNA は男子において10才,女子においては9才まで減少するが,その後ともに増加の傾向を示す。その他, nasion, sella および basion 三者の相対的な位置関係の加齢にともなう変化については,従来,必ずしも一致した見解を得ていないが, nasion は発育の過程において,前上方に位置を移し clivus の傾斜はより険しくなることがわかった。

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