人類學雜誌
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イラク•ハムリソ盆地出土人骨に見られた腫瘍性病変について
和田 洋池田 次郎鈴木 隆雄
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1987 年 95 巻 1 号 p. 107-119

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抄録
頭蓋,下顎骨,肩甲骨,上腕骨,肋骨,椎骨,胸骨,仙骨,寛骨,および大腿骨の多くの骨および部位に骨溶解性病変をもつイラク•ハムリソ盆地出土のイスラム期人骨について,それらの病態を記載している.骨溶解性病変を誘起する多くの原因疾患と比較検討した結果,若い死亡年齢,多くの骨の多部位に発症する病変,それらの位置と分布,病変の大きさと形態,わずかの反応性骨増殖等の点において,この骨格は徐々に成長する腫瘍性病変に罹患したものと結論づけられた.
この報告はイラクにおけるその病変についての最初の古病理学的記載であるだけでなく,世界的にみても報告例の少ない,貴重な資料である。
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© 日本人類学会
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