抄録
古代から栽培されていた日本の主要雑穀三種であるアワ,ヒエ,キビのうち,遺跡からの出土報告が一番少ないのがキビである.小粒であるイネ科雑穀は,炭化物の場合,走査型電子顕微鏡(SEM)による微細構造の観察によらないかぎり,識別が困難なため,最も普遍的なアワとして三者が包活されている場合がある.本報告では,アワとヒエの報告例(松谷1986b,1987)に続き,SEM によりキビ粒と判定された事例を示した.北海道天塩郡豊富町の豊里遺跡(擦文期)から出土した炭化粒で従来アワと考えられていたものである.