抄録
農耕システムはハードウェア(現場産業)ソフトウェア(ノウハウ/プログラム)の2部分から成る.この両者は容易に切り離して別人に割り当てることができる.原始(掘棒,鍬)農耕社会では,そのソフトウェア即ち地域社会の生業カレンダーの管理•運営を中心とする複雑部分は,どこでも,各社会の首長と長老達の分担(責任)となっている.女性は,社会によってはそのハードウェア即ち単純部分を分担することはあるが,そのソフトウェアを担当することはない.狩猟採集民一般でも,カレンダーの管理•運営は長老(退役狩猟者)の責任である.以上の諸事実から,農耕の創始(発明)者は女性ではなく,男性特に狩猟採集社会の知的エリートとしての長老乃至退役狩猟者達であったことが示唆される.