抄録
凍結保存血より DNA 抽出精製を行うことなしに PCR(Polymerase Chain Reaction)法を用いて HLA-DR 抗原の DNA タイピングを行った.8年間,一30°Cで保存されてきた血液試料を緩衝液と混合後,煮沸することにより DNA を粗抽出した. PCR 法により HLA-DRB 遺伝子の高変異部位を含む領域を特異的に増幅し,ナイロン膜にスロットプロッティングした後, digoxigenin-11-dUTP で末端標識した非放射性オリゴヌクレオチドプローブによる解析を行った。結果は血清学的なタイピングと一致しただけでなく,混合リンパ球培養(MLC)法によって定義されるいくつかの DR 亜型(D 特異性に対応する)も区別することができた.これらの方法により凍結保存されていた血液試料からの HLA クラス II(DR, DQ)の DNA タイピングが可能になった.これは野外調査や集団調査に応用可能であり,今後の集団遺伝学的研究において有力な"武器"となりうるであろう.