Anthropological Science (Japanese Series)
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原著論文
日本人高齢者の生業とソマトタイプ
芦澤 玖美加藤 純代熊倉 千代子楠本 彩乃河原 雅典川田 順造佐藤 陽彦
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2006 年 114 巻 2 号 p. 87-100

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抄録
子どもから老人に至るまで,一般日本人のソマトタイプの研究はほとんど行われていない。さらにまた生業,生活環境を考慮したソマトタイプの研究は内外を問わず全く行われていない。本研究は長年一定の職業に就いてきた高齢者が,どのような体形特徴を持つかを知るために行われた。対象は日本の伝統的な生業である農業,漁業に従事する集団と,多様な職業が混在する大都会の集団で,被験者の年齢は50代から90代である。農村被験者男51名,女42名,漁村被験者男53名,女48名,東京都心の被験者男55名,女66名の身体測定を行い,Heath-Carter法によりソマトスコアを算出した。その結果,身体サイズは男女とも農村と漁村の間に差はないが,都心の被験者は体が大きいことが分かった。これには生業に伴うエネルギー消費の違い,食習慣の違いの他に,通婚圏の広さの違いも重要な要因になっていることが示唆された。また,ソマトタイプには地域差ないし生業による差が認められた。都心の男女には内胚葉型が多く,農・漁村では中胚葉型が多かった。特に漁村の女性では中胚葉要素が強く,そのためソマトタイプの男女差は漁村で小さいことが分かった。
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© 2006 日本人類学会
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