抄録
【目的】低ランク体内(Vivo)受精胚の受胎率が低い要因のひとつとして、インターフェロンτの分泌が不足し妊娠認識が成立しないことが考えられる。そこで、単為発生(PA)胚の移植による妊娠認識増強効果を検討した。【方法】実験1:発情後8日(発情=0日)にPA胚を1個(4頭)もしくは3個(3頭)移植した。発情後0、16、20および23日の血漿プロジェステロン(P4)濃度を測定し、0、16および20日に末梢血顆粒球におけるISG15 mRNA発現量を解析した。実験2:B(20頭)あるいはCランク(11頭)Vivo胚1個をPA胚3個と共移植した。対照はB(23頭)あるいはCランクVivo胚(9頭)のみを移植した。妊娠鑑定は発情後40および90日目に実施し、エコーによって胎子を確認した。受胎牛(共移植13頭、対照11頭)と不受胎牛(共移植4頭、対照6頭)でP4濃度およびISG15 mRNA発現量を解析した。【結果】実験1:PA胚1個移植では4頭中1頭で23日にP4濃度が1 ng/ml以下に低下したが、PA胚3個移植では3頭とも1 ng/ml以上であった。ISG15 mRNA発現量が0日に比較して20日で増加した頭数は、PA胚1および3個移植でそれぞれ1および2頭であった。実験2:BランクVivo胚移植では共移植(40日;50%、90日;35%)と対照(52%、48%)の間で受胎率に有意差は認められなかった。CランクVivo胚移植では共移植で40日(73%)の受胎率が高い傾向を示したが90日(45%)では低下し、いずれも対照(56%および56%)との間に有意差は認められなかった。P4濃度は不受胎牛の20日で共移植(4.2±1.2 ng/ml)が対照(0.6±0.2 ng/ml)よりも有意に高かった。ISG15 mRNA量は不受胎牛の16日で高い傾向を示したが有意差は認められなかった。以上より、PA胚は妊娠認識を誘起することが示され、PA胚の共移植は低ランクVivo胚の受胎率を向上させる可能性が示唆された。