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Anthropological Science (Japanese Series)
Vol. 118 (2010) No. 2 P 97-113

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http://doi.org/10.1537/asj.118.97

原著論文

成人期縄文人の四肢骨骨幹部は現代日本人より断面が太く扁平であることが知られている。本研究では,胎生8ヶ月から生後3ヶ月にわたる縄文人と現代日本人の主要四肢骨を用いて,骨幹中央部の各種の断面特性値を群間比較することにより,従来指摘されてきた頑丈性と扁平性の成因について改めて考察した。資料は縄文人49個体,現代日本人185個体の上腕骨,橈骨,尺骨,大腿骨,脛骨,腓骨を用いた。内部断面計測では高精細のマイクロCT装置を導入した。解析においては各四肢骨の骨幹長を相対的な年齢指標とみなし,骨幹長を共変量とする共分散分析を実施した。その結果,全身の四肢骨にわたり,縄文人の骨幹は一貫して現代日本人より外径が太く,断面上の骨量が多く,力学的に頑丈な傾向にあり,さらには二集団の断面拡大パターンの間に有意な違いはないことがわかった。二集団の外部形状と骨分布形状は胎児・乳児期を通じてほとんど変化しておらず,大半の四肢骨の断面示数において有意な集団差は認められなかった。ただし,縄文人の大腿骨の外部形状は一貫して現代日本人より前後方向に扁平であることがわかった。本研究では,成人期縄文人で指摘されてきた骨幹部形質のうち,外径の太さ,骨量の多さ,さらに大腿骨骨体上部の相対的に前後径が短い(内外側方向に長い)扁平さに関しては,既に胎生期にそれらの傾向が存在し,発生初期におけるパターン形成の影響が示唆された。

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