Anthropological Science (Japanese Series)
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原著論文
日本人の骨格における大腿骨計測に基づいた体量推定の妥当性
瀧川 渉
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2018 年 126 巻 2 号 p. 109-131

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抄録

大腿骨の計測値に基づいた古人骨の体量推定式として,骨頭垂直径による回帰式(FHD法)や骨幹近位部の矢状径と横径の積を用いた回帰式(FSTpr法)が考案されてきた。今回,日本人におけるこれらの推定式の妥当性を確認するため,関東近代日本人の解剖晒骨標本に基づいて検討を行った。FHD法とFSTpr法による既報の推定式を用いて体量を算出し,19世紀末以降の20代前半の平均体重データとの比較から,これらの方法の結果が日本人の実態にどれだけ近いのかを検証した。その結果,男女ともどの方法でも日内変動や季節間変動以上に当時の平均を上回る推定値が示され,特に男性のFHD法では誤差が著しいことが判明した。また推定身長を踏まえた体格指数(BMI)による評価では,どの方法でもBMIの平均が高く,過体重の個体の割合も近年の日本人の実態より明らかに高くなった。既報の推定式が日本人の骨格に適さない理由として,時期や年齢層による差が示唆される一方,基本データに使用されているヨーロッパ系を主体とした多くの集団のBMIが過去の日本人のそれよりも過大であったことが指摘される。日本人骨格のより妥当な体量推定には,日本人の生体計測データに基づいた推定式を作成することが求められる。

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© 2018 日本人類学会
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