Anthropological Science (Japanese Series)
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上顎犬歯形態からみた人類進化
山田 博之中務 真人國松 豊濱田 穣石田 英實
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論文ID: 211207

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抄録

オスの上顎犬歯の大きさと形態について進化過程の構築を試みた。結果を以下に示す。(1):現生および化石類人猿段階から現代人へ至る歯冠サイズの小型化は後期中新世のサヘラントロプスおよびオロリンの時代にすでに始まり,この傾向は現代人に至るまで続いている。(2):尖頭観では現生・化石類人猿で主に近遠心方向に長い卵形をしている。アファレンシス猿人以降では唇舌方向に長い形が主流になる。(3):舌側面観では現生・化石類人猿で主に底辺が幅広で丈の高い歪三角形をしている。例外的にウーラノピテクスでは歪四角形をしている。ヒト族では五角形あるいは菱形が主流になる。(4):歯冠shoulderの位置は現生・化石類人猿では歯頸部にあるが,ヒト族では尖頭方向へ移動している。(5):近心切縁溝は現生・化石類人猿では長く深い溝,カダバ猿人からアフリカヌス猿人では近心の切縁溝と辺縁溝が合流し,エレクトス原人以降では近心辺縁溝のみからなる。(6):辺縁隆線は現生・化石類人猿では短い。ウーラノピテクスとヒト族では尖頭方向に長く延びている。(7):近心舌側面隆線は現生・化石類人猿では近心切縁溝に沿って走行している。ヒト族では歯冠中央を垂直に走行する。(8):歯頸隆線は現生・化石類人猿では狭いが,ヒト族では歯冠高に対し相対的に広くなり,基底結節も発達している。

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