2024 年 4 巻 1 号 論文ID: SC-2024-2
ガンマ帯域脳波に相当する周波数である40Hz周期の明滅光や断続音などの感覚刺激の呈示による認知症治療あるいは悪化抑制に関する研究が進められており,その有用性が期待されている。我々は,断続音に加えて振幅変調音であっても聴取時に脳波が同期することをこれまでに示したが,それらは若年者を対象とした検討であった。本研究では,40Hz振幅変調した音刺激を高齢者と若年者に聴取させ,ガンマ波の同期度の比較をおこなった。刺激には,ニュース番組や音楽番組の音源の全体あるいは音声を除いた部分のみを変調したものを含めた。呈示レベルは,各参加者の聴力レベルの損失分だけを補償した値に統制した。結果,両年齢群ともに,全ての変調音において40Hz脳波が統計的に有意に同期すること,また,両年齢群の脳波同期度に顕著な差は見られなかったことが示された。この結果は,高齢者群に対しても振幅変調音の呈示によるガンマ帯域脳波の同期が可能であることを示しており,音による認知症対策の臨床応用の可能性を期待させる結果である。