抄録
大学の教室で音声を聴取する際の残響の影響が, 指向性マイクを使用するとどの程度改善されるかを明らかにする目的で以下の実験を行った。防音室と教室 (残響時間1.6秒) でHINT日本語版文リストを再生し, これを, 防音室と, 教室の音源から2mと8mの位置で無指向性および指向性マイクを用いて録音した。これらの検査素材 (防音室リスト, 教室2, 8mリスト) を用いて, 健聴成人12名を対象に語音了解閾値 (SRT) を測定し比較検討した。無指向性マイクの録音では, 防音室リストと比較して, 教室2m, 8mリストのSRTは有意に上昇した。指向性マイクでは残響下のSRTに有意な改善がみられ, 教室2mリストでは無残響下と同等の成績であった。難聴者が残響の大きい教室で講演等を聴く場合, FM補聴器が使用できない状況では, 最前列で指向性補聴器を用いて聴取することが次善の策として有効である可能性が示唆され, 今後難聴者による検討が必要と考えられた。