抄録
聴覚障害以外に他の障害を合併している重複障害児における聴覚医学的問題や留意点について概説した。最近は広汎性発達障害との重複が増えており, また以前多かった脳性麻痺から先天異常, および染色体異常への変遷が認められる。重複障害児においても聴覚検査はBOA, COR, ABR検査の併用が基本であるが, CORの閾値 (最小反応レベル) とABRの反応閾値は発達に伴って改善する例があり, 検査は継時的に行う必要がある。ASSRは閾値を周波数別, 左右別に他覚的に測定できるので, CORやABRの欠点を補う検査として期待されている。補聴器装用, 人工内耳埋め込み手術の目的は必ずしも音声言語の獲得のみにこだわらず, 何らかのコミュニケーション手段が獲得できればよいとする方向に変わってきている。少なからず手術侵襲を伴う人工内耳では, 目的を明らかにして過度の期待を持たせることのないようにインフォームドコンセントを十分行わなければならない。