2024 年 67 巻 1 号 p. 54-60
要旨 : われわれの病院がある北海道は, 日本国土の約4分の1という広大な面積を有し, 専門医療機関へのアクセスが恒常的な問題となっている。
このような北海道における先天性難聴児に対する人工内耳手術例について, 当院の初診時の年齢, 人工内耳手術時の年齢, 初診から人工内耳手術までの期間について, 地域差を検討した。対象は2014年4月1日から2021年12月31日までに札幌医科大学附属病院耳鼻咽喉科にて人工内耳手術を施行した52例とした。遠方地方では初診のタイミングが有意に遅くなってしまうため, 手術までの準備期間が短くなってしまう結果であった。また保護者のアンケート調査からは身体的・精神的な負担もより強いことが考えられた。
難聴の早期診断・治療介入の必要性の啓発や遠隔相談や遠方地方への診療応援の強化などを行い, 現状は少しずつ改善されつつあるが, 今回の結果を改めて理解し, 北海道の地域差を是正すべく, 保護者の不安や負担の軽減を目指し, さらに努めていかなければならない。