2024 年 67 巻 1 号 p. 61-69
要旨 : 本研究は, 高音急墜型聴覚障害児2事例を対象として音声コミュニケーション指導を行い, 本指導の方法を詳細に示すとともに, 指導によってもたらす有用性について検討した。実験方法は, 指導前後の状況について半構造化面接を行い, 当事者視点で検討した。結果, 指導前では, コミュニケーションに自信を持てず, 対処方法が分からずにいたが, 指導をとおして【聞き返し】,【確認】などコミュニケーションスキルが会話で取り入れるようになった。また, 相手とことばを交わしながらコミュニケーションが可能となることで充足感を持てるようになった。本指導は, 自らの障害を認識し, 自分に何が必要であるかということを考えるきっかけとなった。また, 本指導によってコミュニケーションスキルの活用は,聞こえにくさを補う環境調整にもなりうることを示唆した。