1992 年 35 巻 5 号 p. 557-561
色素性乾皮症A群の1例の聴力悪化の経過と言語機能検査成績について報告した。 7歳2ヵ月頃までは右耳の聴力は34dBでほぼ正常範囲にあったが, 同時期の左耳はすでに60dBの難聴であった。 7歳5ヵ月には右耳も70dB台の難聴となり, 補聴器装用を開始した。 補聴効果は比較的良好であった。 本例における難聴の進行が左右同時でなかった点で, 既報告例と異なっていた。 また, 難聴の性質は末梢性と中枢性の混在が示唆された。 難聴と精神遅滞との関係は1側がほぼ正常範囲の聴力レベルであった時期にすでにIQ 45以下であったことより, 両側の聴力が悪化する前にすでに精神遅滞が進行していたと考察した。 したがって, 本例の言語発達遅滞は難聴によるものより精神遅滞に伴うものと考えた。 また, 本疾患は早期からの関連領域とのチームアプローチが重要な症例であることを強調した。