AUDIOLOGY JAPAN
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高度難聴まで進行した急性低音障害型感音難聴の2症例
小川 郁井上 泰宏新田 清一熊埜御堂 浩井出 里香神崎 仁
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2001 年 44 巻 1 号 p. 60-65

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抄録

難聴が進行し, 高度難聴をきたした急性低音障害型感音難聴 (ALHL) の2症例を提示した。 2症例の臨床的特徴をまとめると, 2症例とも中年男性であり, 当科受診時, いずれも阿部の規準でもALHLと診断される軽度の感音難聴を示したが, グリセロールテストは陰性であった。 また, MRIやABRでは後迷路性難聴を疑う所見を認めず, 難聴悪化時に行った誘発耳音響放射検査, 歪成分耳音響放射検査でも反応が得られなかったことから, 内耳性難聴と考えられた。 グリセロールテスト所見と難聴の進行様式から蝸牛型メニエール病とは異なる病態が推測された。 自己免疫的病態も推測されたが, ステロイド剤に対する反応は不良であり, いわゆるステロイド依存性難聴とも異なる経過であった。 以上の結果より難聴進行の原因や病態を明らかにすることはできなかったが, ALHLの病態を明らかにするためには, 今後, 今回の症例のような非典型例の検討も必要であると考えられた。

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