オーストリア文学
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「私の語の故郷へ」
ローベルト・シンデル詩集『あとからの灯火(ともしび)』
福間 具子
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2016 年 32 巻 p. 47-59

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抄録

はじめに ドイツ語圏において、ローベルト・シンデル(一九四四―)の名は主に長編小説『生まれ(Gebürtig)』(一九九二)(1)の作者として広く知られている。『生まれ』は、いわゆる「第二世代」(2)―ホロコーストの犠牲者あるいは生還者を親に持つ世代―が一九八〇年代になってなおウィーンにおいて非ユダヤ人と関わる際に感じる困難と、そこに起因する自己の存立の不安定さを扱った作品として注目を集め、その後英語とヘブライ語へ翻訳されると、「ホロコースト文学」というジャンルにおいても重要な作品のひとつに数え入れられるようになった。二〇一三年には『生まれ』を含む三部作の二作目となる『冷たい男(Der Kalte)』(3)が出版され、戦後ユダヤ人のアイデンティティの問題を扱った散文作家というイメージはさらに確たるものとなりつつある。

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