2014 年 30 巻 p. 34-41
本論文の目的は,イベントスタディの分析手法を用いて,研究開発費に関する会計基準の改正と,日本の株式市場での短期株式リターンの関係について実証的に分析することである。まず,東京証券取引所1部・2部に継続上場している企業を対象とし,研究開発費に関する会計基準の改正アナウンスメント前後で短期の株式リターンが異常な動きを見せるかどうかについて検証する。次に,これら全標本企業を研究開発の規模によってポートフォリオに分類し,それぞれのポートフォリオ間で反応が異なるのかどうかについて検証していく。実証結果からは,2008年における研究開発費に関する会計基準の改正は企業の株価を引き上げる効果があったことを確認できた。ゆえに,日本市場の投資家はこの会計基準の改正という行動をポジティブに評価しており,さらに,研究開発費については発生時費用処理より資産として計上することが適切と判断していると解釈できる。