応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説-糖質関連酵素化学シンポジウム-】 担子菌の産生するアスパラギン結合型糖鎖遊離酵素系
濱口 祐井上 裕香子伊藤 司篠原 かな子谷脇 聡海住 宜広久田 博元秦 洋二Tipaporn LimpaseniPiamsook Pongsawasdi伊藤 和央
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2011 年 1 巻 2 号 p. 159-167

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抄録
エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)とぺプチドN-グリカナーゼ(PNGase)は,in vivoでのアスパラギン結合(N)型糖鎖の動態を知る上で重要である。また,糖鎖解析やN型糖鎖配糖体合成に不可欠である。われわれは,多くの担子菌からENGase活性を検出し,Flammulina velutipes由来酵素エンドFVを精製した。本酵素は,N型糖鎖のハイマンノース型によく作用し,コンプレックス型には作用しなかった。また,糖鎖転移活性を示した。エンドFVはGHファミリー18酵素で,一次構造はクラスIIIキチナーゼと最もよく似ていたが,予測三次構造は,Streptomyces plicatus由来エンドHと似ていた。一方,大腸菌,酵母および麹菌でのエンドFVの発現系を構築し,発現系によって特異性が異なっていた。さらに,Agaricus bisporus由来エンドABを精製した。エンドABは,分子量や特異性がエンドFVと異なっていた。また,糖タンパク質から糖鎖を遊離し,GHファミリー85に属すると考えられた。一方,担子菌でのPNGaseの存在は限定的で,Hypsizigus marmoreus由来PNGase HMは広くN型糖鎖に作用し,F. velutipes由来PNGase FVはFuc結合糖鎖特異的な新規酵素であった。後者には特異性の異なる2つの酵素が存在した。また,担子菌のPNGaseは他起源のものとは異なるファミリーに分類されることが示唆された。
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© 2011 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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