本研究では,焼きいもの味質において粉質系に分類される「ベニアズマ」と粘質系に分類される「べにはるか」,及びそれらの中間的な食味を示す「五郎島金時」の澱粉の物理化学的な性質の変化についてキュアリングの効果を分析した.キュアリング直後の各試料の澱粉の糊化開始温度を比較してみると,各品種ともにキュアリングによって1°C程度低下する傾向がみられた.アミロペクチン鎖長の重合度6~12の存在比を比較してみると,「ベニアズマ」と「べにはるか」由来澱粉はキュアリングによってその含量の割合が増加したが,「五郎島金時」由来澱粉はそのような変化がみられなかった.RVAの粘度上昇温度を比較してみると,「ベニアズマ」由来澱粉はキュアリングによって約1°Cの低下がみられたが,他の澱粉に差異はみられなかった.また,セットバック値を比較してみると,「ベニアズマ」由来澱粉はキュアリング後に30%上昇したが,他の澱粉の値は20%程度低下していた.以上の分析で決定したパラメータを用いて主成分分析した結果,澱粉の物理化学的な性質においても粘質,中間質,及び粉質で分類する事ができた.