応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説-応用糖質科学シンポジウム-】 リゾチーム遷移状態アナログの合成と反応機構の解析(応用糖質科学シンポジウム)
尾形 慎碓氷 泰市梅本 尚之大沼 貴之深溝 慶沼田 倫征
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2014 年 4 巻 4 号 p. 308-313

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抄録

ニワトリ卵白リゾチーム(HEWL)の触媒反応機構として2つの有力な説(Phillips機構とKoshland機構)が提案されているが,未だに議論の対象となっている。本総説では,この両説が推定した遷移状態に基づいて設計した2種類の新規HEWL遷移状態アナログ阻害剤の合成と,これら阻害剤を用いたHEWL触媒機構の再検討について報告する。Phillipsが提唱した遷移状態のアナログとしてはC1がsp^2混成であり安定な半イス型様コンフォメーションをとった2-アセタミド-2,3-ジデオキシジデヒドロ-グルコノ-δ-ラクトン(L)構造を末端に有する(GlcNAc)_4-α,β不飽和δラクトン体(GN_3L)を合成した。一方,Koshlandが提唱した遷移状態のアナログとして,C1がsp^3混成であり^4C_1イス型コンフォメーションをとった1-デオキシノジリマイシン(モラノリン;M)構造を有するキトトリオシルモラノリン(GN_3M)を分子設計した。次に,本阻害剤とHEWLとの相互作用解析を行った。その結果,GN_3MがHEWLに対して拮抗型の強い阻害活性を示すとともに,その結合位置は触媒残基が位置する-1サブサイトを含む-4から-1サブサイトであることが明らかとなった。これにより,新規遷移状態アナログGN_3Mを用いることで,HEWLの共有結合中間体形成に関する新たな実証例を示すことに成功した。

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© 2014 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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