データ分析の理論と応用
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論文
拡張型適応的指標モデルの開発とその応用
下川 敏雄辻 光宏後藤 昌司
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2013 年 3 巻 1 号 p. 1-16

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抄録

臨床研究では,幾つかの測定値に基づく指標を合計した得点により,疾患の進行程度を表すことがある(例えば,大腸がんの予後を表すT 因子など).Tian & Tibshirani (2010) は,このような得点を統計的に構成する方法,および,新規治療が有効な患者像を得点で表す方法として,適応的指標モデル(AIM: AdaptiveIndex Model)を提案している.AIM のモデルは,共変量に基づく複数のルールを指標関数により構成し,その合計値(得点)を説明変数と見做したもとで,一般化線形モデルの枠組みで構成される.その結果,応答が計量値,計数値,あるいは生存時間研究の場合などの広範に適用できる.

臨床研究では,共変量の応答への影響(主効果)とともに,治療法× 共変量の2 次交互作用(交互作用)の影響を評価することがある(例えば,がん臨床研究の予後因子と予測因子).しかしながら,AIM では,回帰パラメータに対するスコア検定統計量がルールの選定基準に用いられるため,両方をモデルに含めることができない.さらに,既存のAIM では,前進ステップワイズ法がモデル構築(ルールの選定)に用いるため,モデルに含まれたルールの再評価は行われない(Tian & Tibshirani (2010)).

本論文では,既存のAIM を拡張する方法,すなわち,拡張型AIM(EAIM: ExtendedAdaptive Index Model)を提案した.EAIM では,ルール評価基準に偏分残差を用いることで,主効果と交互作用を同時に推定することを可能にした.さらに,多変量適応型回帰スプライン(MARS; Multivariate Adaptive Regression Splines, Friedman, 1996)のモデル構築過程(前進ステップワイズ法によるモデル構築,後退ステップワイズ法による部分モデル系列の構成,交差確認法による最適モデルの選定)を応用することで,AIM のモデル構築過程の問題を解消した.

EAIM の有用性は,事例検討により検討し,EAIM に対するMARS アルゴリズムの有効性は,数値検証により検討した.その結果,EAIM は,主効果と交互作用を適切に捉えることができるものの,その結果は,グラフなどで精査することが重要であることがわかった.

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© 2013 日本分類学会
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