本研究の目的は,英語文章読解テストにおける錯乱枝(多くの受検者に選ばれ,受検者の典型的な誤りを反映した誤答選択枝)の選択率に対し,キーセンテンス(選択枝に関連する文章中の文)と錯乱枝との語の重複・設問タイプが及ぼす影響を,能力群別に検討することである.本研究で検討した設問タイプは,文章中に明示されている情報についての理解を問う下位レベル設問と,文章の構造やテーマの理解を問う上位レベル設問の2 種類である.大学生460 名に対し,本研究の目的に合わせて作成したテスト冊子への解答を求めた.実験操作を行った項目では,正答選択枝1 つに加え,否定語を含む錯乱枝・対義語を含む錯乱枝・因果関係の取り違えを含む錯乱枝の計3 つを受検者に提示した.階層ベイズモデルによるパラメタ推定の結果,下位レベル設問において,能力低群では語の重複を含む錯乱枝の選択率が高かったが,能力高群では語の重複を含まない否定語錯乱枝・対義語錯乱枝の選択率が高かった.一方,上位レベル設問では,語の重複に関して下位レベル設問とは逆の結果が得られた.本研究の結果から,今後の項目作成の際,下位レベル設問では語の重複を含む錯乱枝を,上位レベル設問では語の重複のない錯乱枝を作成すれば,英語文章読解項目が受検者の認知過程を反映し,識別力を向上できる可能性が示唆された.