抄録
骨親和性の高いアパタイト薄膜の開発を行うため、高周波プラズマスパッタリング装置を用いてTi上にストロンチウムアパタイト(SrAp)薄膜を作製した。膜の結晶化のため水熱処理を用いた。SrAp薄膜は、X線回折装置(XRD)を用いて同定及び結晶性を評価し、骨芽細胞様細胞により細胞接着、細胞面積及びVinculin発現、ラット骨芽細胞によりアルカリホスファターゼ(ALP)活性及びオステオカルシン(OCN)発現を評価した。XRD結果から、SrAp薄膜は水熱処理前でも高い結晶性を示した。接着細胞数では、水熱処理後のSrAp薄膜(hyd-SrAp)は水熱処理前よりも高い値を示したが、水熱処理後のHA薄膜(hyd-HA)との有意差は確認できなかった。細胞面積では、hyd-SrAp及びhyd-HAはTiと同程度であり、Vinculin数ではhyd-SrApはhyd-HAよりも高い値を示した。ALPではhyd-HAが最も高い値を示し、OCNではhyd-SrApがhyd-HAよりも高い値を示した。これらの結果から、hyd-SrApにより強く細胞が接着し、培養14日後の骨芽細胞の分化において、hyd-SrApとhyd-HAの骨親和性に明確な差異はないと考えられる。