バイオインテグレーション学会誌
Online ISSN : 2186-2923
炭酸またはマグネシウム含有ハイドロキシアパタイト薄膜の作製
但野 ちなみ尾関 和秀増澤 徹青木 秀希
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2014 年 4 巻 1 号 p. 79-84

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抄録

早期の骨新生が得られるHA薄膜の獲得を目的として,スパッタリング法により炭酸含有ハイドロキシアパタイト (CHAp)薄膜及びマグネシウム含有ハイドロキシアパタイト(Mg-HA)薄膜の作製を試みた.CHAp薄膜は基板としてチタン(Ti)とシリコン(Si)を用い,Mg-HA薄膜はTiとろ紙を用いた.CHAp薄膜のターゲットはHA粉末,成膜ガスはCO2とArの混合ガスを使用した.Mg-HA薄膜のターゲットはHA粉末とMgO粉末の混合粉末,成膜ガスはArを使用した.Ti基板へ成膜したCHAp,Mg-HA薄膜は,800℃の大気加熱処理を行った.ろ紙へ成膜したMg-HA薄膜は700℃の大気加熱処理によってろ紙を燃焼させ,膜粉末を得た.Ti基板へ成膜したCHAp,Mg-HA薄膜は,X線光電子分光装置(XPS)を用い,Depthprofileによる元素分析を行った.また,X線回折装置(XRD)により生成物の同定及び薄膜の結晶性の評価を行った.Si基板へ成膜したCHAp薄膜は,フーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)による生成物の同定を行った.作製したMg-HA膜粉末は,XRDパターンのピーク角度よりHA結晶及びβ-TCP結晶の格子定数を算出した.CHAp薄膜では,薄膜表面にのみCの存在が確認された.また,HA結晶中のPO4と置換したCO3の存在が確認された.このことから,スパッタリング法により作製したCHAp薄膜は,表面のみにCHApが生成していた.Mg-HA薄膜では,深さ方向に対して均一量のMgの存在が確認された.また,HAの回折ピークが高角側へシフトしていた.このことから,スパッタリング法により作製したMg-HA薄膜にはMg-HAが生成していた.熱処理を施したMg-HA膜粉末では,全てのサンプルでβ-TCPの格子定数が減少していた.今回作製したMg-HAサンプルは,熱処理前はHAへMgが置換していたが,熱処理後にHAとMg-β-TCPに相分解したことが考えられる.

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© 2014 一般社団法人バイオインテグレーション学会
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