2014 年 22 巻 p. 1-12
本稿では, 舞踊や祭などの無形文化遺産のデジタル・アーカイブに関する話題について述べる. 無形文化財は人間の身体動作が大きな要素になる. 身体動作の計測には, おもに人体の関節部分の動きや関節角度を計測するモーションキャプチャシステムが利用される. 舞踊の身体動作の計測には, 光学式モーションキャプチャシステムが広く利用されている. 一方で, 舞踊で特に重要な, 衣装などをつけた踊り手の表情などを含む 「見え」 を, 3次元情報として記録するシステムも開発されている. ここでは, これらのシステムについて紹介した後, これらを, 舞踊を中心とする無形文化財のアーカイブに利用することの意義および課題などについてふれる. さらに, モーションキャプチャにより計測した身体動作データを対象にして行うデータ解析やデータ検索の手法について述べる. 最後に, 世界遺産にも登録された大規模な祭りである, 京都祇園祭の山鉾巡行という文化遺産を対象にしたデジタル・アーカイブの試みについても紹介する.