2018 年 24 巻 p. 49-57
我々はこれまで, 視覚誘導性自己運動錯覚 (KiNvis) について, 生理学的評価手法を用いた基礎研究および脳卒中片麻痺症例を対象とした臨床研究を継続してきた. 本稿では, KiNvisが誘導されているか否かを検出するためのバイオマーカーを探ることを目的とし, 頭皮上脳波を用いてKiNvis中の神経活動を調べた一連の研究を解説した. 結果として, 頭頂間溝周辺におけるα周波数帯域の事象関連脱同期 (ERD) を指標とした場合, KiNvis中のみERDが生じ, 単に身体運動の動画を観察した場合との違いを検出することができた. この知見は, KiNvisをBrain-Machine Interfaceに応用する際のトリガーとなる神経活動として, 頭頂間溝周辺で生じるα周波数帯域のERDが利用できる可能性を示唆するものである.