これまで筆者らは,脳卒中や脊髄損傷などの神経損傷後に生じる上肢運動麻痺の治療に応用するために,視覚刺激によって認知的に運動機能を拡張し,運動感覚を明示する方法(視覚誘導性運動錯覚,kinesthetic illusion induced by visual stimulation,KINVIS)について研究を継続してきた.本稿では,リハビリテーションの臨床において,脳卒中後に重度の運動麻痺を呈した患者群が1回20分のKINVISを体験することによって,即時的に運動イメージ想起能力が向上することを示した研究の内容を紹介する.また,その向上は,KINVISに神経筋電気刺激(Neuromuscular Electrical Stimulation,NMES)を併用したKINVIS療法と運動療法の複合療法を反復することによる運動機能改善の潜在能力を表している可能性について,補足データを基に考察する.