2023 年 26 巻 p. 55-65
多くの脳卒中片麻痺者では歩行中のフォアフットロッカー機能が消失する.本研究では単脚支持期間中に麻痺側の踵を挙上させフォアフットロッカーを機能させるための装具(ROSI:Reverse Omega Shoe Insert)の開発と評価を目的とした.本研究で開発したROSIはカーボン板で成型された逆オメガ形状を有し,MP関節より近位にROSI頂点を設置するものである.ROSIは直交表配列に従って16パターン製作し,健常者1名による模擬大腿義足歩行によってROSIの最適形状と設置位置を決定した.開発したROSIの有用性を確認するために,脳卒中片麻痺者16名を対象とした.比較方法は,2種類の条件(背屈遊動と背屈制動)の短下肢装具にROSIを組み合わせて,3次元動作解析による歩行評価を実施した.結果として,背屈制動機能を有する短下肢装具の足裏底面にROSIを内蔵することで,床反力作用点の前進をアシストするとともに,MP関節より近位に位置するROSI軸を床反力作用点が超えることで,単脚支持期間中に踵を挙上させることを明らかにした.