バイオフィリア リハビリテーション学会研究大会予稿集
Online ISSN : 1884-8699
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バイオフィリア リハビリテーション学会
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大会長挨拶
森田 能子
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p. 1-

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抄録

思いおこせば当学会の発起人第1人者である滝沢茂男さんと知り合ってかれこれ20年近くになる。 

彼は藤沢で湘南ボーイ、私は生粋の岡山人で、その接点は?というと第35回日本リハ学会が青森で開催された平成10年であった。 

丁度家の中で使える便利な歩行器を探して学会の展示会場を歩いていた時に目にとまったのが、知る人ぞ知るあのそり型歩行器!であった。早速気に入って現物を岡山に届けてもらったところ、その歩行器と一緒についてきたのが滝沢さんその人だった。今思えば我々は同じような発想をしていて波長があったのかもしれない。かくして我々の長い付き合いが始まったわけである。 

彼はいつも真顔でいう。

「我々の子供の時代が来た時に彼らを年老いた我々の奴隷にしてはいけない。」 

正にこのセリフに当学会の根幹をなす考えが詰まっている。それは医学だけなく社会保障の全体を含んでいるといっても過言ではない。 

過去に私の専門であるリハビリテーション医療に少し風穴を開けようとしているのかなと不安を感じたこともあった。彼の内心を察してみるとリハビリは一体何の成果をあげているのかという喝を飛ばしたかったのだろう。現にそういったリハも一分まかり通っていたこともあったので私はそれに反論するつもりはなかった。それに私は病院内だけのリハではいずれ行き詰るとずっと感じていた。そしてこの数年来医療の守備範囲を超えて地域で支える地域包括ケア構想が声高に叫ばれる時代となった。医療人だけで完結できる時代ではなくなった今、パタコロ・プーリー・平行棒・そり型歩行器全て母上恭子さん発案の一連の運動を滝沢さんは 創動運動;Motivative Exercise と命名して、老人を寝たきりから救済する1手段として強い信念を持って世の中に送り出した。この運動の大きな特徴は自らが自分の力を使って自分で運動するもので、そのきっかけ作りを恭子さんは1人で何十人もの患者の訓練を駆使しながら生み出していった。同時に多くの人たちに運動をしてもらうための現場の必要性から生まれた工夫を凝らした産物であった。 

そして様々のジャンルの専門家を仲間に引き込んでこの会を立ち上げた滝沢さん。私もかき集められた1人である。 

医療者としての立場は彼にとっては大きな味方であったに違いない。膨大なエネルギーで研究費を手に入れて岡山リハビリテーション病院の片麻痺患者に協力を得て、fMRIとfNIRSの高度の検査機器を駆使してこの簡単な機器で運動することで脳が活性化されていることを証明するチャンスに恵まれた。私はあまりにも膨大なそれらの実験結果に圧倒されたことをここで白状する。

 発想の転換は自由な人が起こす。正に老化も麻痺も決められた治療法は無いに等しい。

これから老後に突入する我々団塊の世代が、Motivative Exerciseを利用して高齢で脆弱になっても更に障害を持っても自分の体は自分で運動していく気持ちになれば依存しない生活を少しでも長くできるに違いない。 

この運動が日本の隅々まで広まることを願って止まない。

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