抄録
本稿は、地域の持続可能な発展の問題をイノベーションとの関係で検討したものである。持続可能性に関しては、これまで様々なレベルで議論されてきた。本稿では、持続可能性の問題を経営学的にアプローチする場合、地域を単位に研究することが有望であることを示し、持続可能な発展の鍵を握っている地域イノベーション創出のメカニズムについて、コレクティブ・インパクトの考え方を金井(2012)の地域イノベーションのモデルに統合し、理論的検討を行った。この検討を通じて、曖昧かつ複雑な地域の持続性の問題にアプローチするためには、多様なセクターからなる人々を巻き込み、有効な相互作用を展開することができる企業家的プラットフォームが、重要な機能を果たしていることが明らかになった。地域イノベーションにおける企業家プラットフォーム(企業家活動Ⅱ)の役割とは、分散している多様な知を集め、新たな解釈を通じて新しい結合の可能性を高め、イノベーション(企業家活動Ⅰ)を促進するメカニズムと考えることができる。つまり、多様なアクター間での自律的な対話と実践を通じての相互作用によって、イノベーションのベースとなる新たな実践知を創造することで曖昧性や不確実性を縮減するとともにアジェンダに関心を持つ潜在的企業家を惹きつける磁場となり、企業家を可視化させることで資源動員の可能性を高める場として機能し、イノベーションを促進するメカニズムとなっている。