2023 年 63 巻 3 号 p. 181-182
「生物物理夏の学校(夏学)を開催します!ぜひお越しください!」そう言われても,当時学部の3年生だった私には今一つそれが何なのだか分からなかった.合宿と聞いて変な思想を吹き込まれるのではないかという大変失礼な先入観を抱きつつ,それでも心惹かれる生物物理というワードをウェブブラウザに打ち込んだ.あれから4年,冒頭の文言を若手の会だよりの原稿に打ち込みながらふと考える.さてこの文章をどなたかが読む際には,当時の私が感じたような疑念を払拭し,足を踏み出すだけの“活性化エネルギー”を生み出すだけの情報があるのであろうか.私は打ち込んだ定型文を削除し,一から考え直すことにした.
そのような訳であるから本記事では,まだ夏学に参加したことが無い諸兄姉を対象に,参加をモチベートすることを目指し,夏学をご紹介していきたい.本記事は,関西支部長兼夏学スタッフの村田がお送りする.
沿革等は過去の記事1)-3)にお任せして,現在の夏学がどのような場であるかを表現すると,「生命という物理現象について議論したいという全国の若者が集まり,連日わちゃわちゃと語りつくす会」である.雰囲気はフランクで,特段スーツなどを準備いただく必要は無い.過去の参加記4)をお読みいただければ,雰囲気を感じ取っていただけると思う.また,どのようなことでも質問し合える風土がある.後述するように参加者の分野が多様であるため,各参加者の前提知識も様々である.したがって,他分野の非常に初歩的なことを質問しても,それは全く恥ではなく,むしろ相互理解のために重要なことである.そのような意味で非常に心理的安全性の確保された会とも言えよう.
夏学に参加資格は無い.強いて言えば,高校生以下は難しいかもしれない.生物物理の夏学は,参加の敷居を徹底的に下げていることが特徴である.年齢層は,修士・博士の院生がボリュームゾーンだが,学部一年から参加される方は毎年のように見受けられるし,もちろんポスドクの方のご参加もある.後述のスタッフ一覧を見ていただければ,運営層も幅広いということがお分かりいただけるだろう.研究分野も幅広く,本会で発表のある分野はもちろん,バイオ全般,数学や工学の方,過去には文系の方が参加されたこともある.私自身,学部3年生で初参加の際は,応用生物科学の専攻であったし,今は行動生理学の研究をしている.
生物物理学の専攻でなくても良いのか,生物物理学会のラボ所属でなくても良いのかという点については,我々運営としては問題にしていない.今後生物物理学会に参入されるかもしれないし,そもそも「これでなければ生物物理学ではない」といったような排他的な決め方をするのもおかしな話である.そんな些末なことよりも我々が望むのは,異なる分野を深めてきた若手研究者と出会い,そして各々の観点からの議論を交わすこと,これに尽きるのである.
会期:9月4日(月)~9月7日(木)3泊4日
開催形式:ハイブリッド開催(現地&オンライン)
会場:滋賀県高島市 びわ湖畔リゾート 白浜荘
HP:http://bpwakate.net/summer2023/index.html

第63回夏学のプログラム表
本年は,「生物物理の新展開」をテーマとして開催する.生物物理学は生命現象の物理的背景を理解する,あるいは物理および物理化学の技術を用いて生命現象を解明する様々な研究が対象となり得る.そのため,構造生物学やアクティブマターなど,原子から個体群の幅広いスケールで多様な研究がなされてきた.また,AIの台頭や解析技術の高効率化など現代の技術革新に伴い,分野の多様性はさらに広がりつつある.この多様さに触れることは,若手の皆さんの研究の発展に多いに役立つのではないだろうか.
本夏学ではその多様さに改めて目を向け,これまで夏学で扱われてきた分野だけでなく,夏学で馴染みの無かった分野や,新たな分野を取り入れた内容とした.本夏学を通じて,参加者の皆さんの研究に「新展開」が生まれることを願っている.
3. 講師テーマ達成のため,歴史の長い分野に加え,近年注目されてきた分野において最先端の研究をされている先生方をお呼びする.また,本夏学では,例年よりも比較的年齢の近い先生方をお呼びしている.キャリアを考えるという意味でも,比較的年齢の近い先生方に,性別の分け隔てなくお話を聞く良い機会となると思われる.以下の先生方にご講演いただく予定である.
〈1日目〉
神谷信夫 教授(大阪公立大学)
〈2日目〉
鳥谷部祥一 教授(東北大学),安永卓生 教授(九州工業大学),柳澤実穂 准教授(東京大学),飯田渓太 准教授(大阪大学)
〈3日目〉
新井宗仁 教授(東京大学),宮﨑牧人 特定准教授(京都大学),平岡裕章 教授(京都大学,理研),南後恵理子 教授(東北大学),車兪澈 副主任研究員(JAMSTEC),小林穂高 特任講師(東京大学),井上雅世 准教授(九州工業大学),沖村千夏 学術研究員(山口大学)
〈4日目〉
高田彰二 教授(京都大学),磯村拓哉 ユニットリーダー(理研CBS)
(所属と役職は2023年4月現在)
4. ポスターセッション多様な研究には,もちろん参加者のあなたの研究も含まれる.本セッションで,多数の参加者にポスター発表をしていただくことで,その多様さの一端を担っていただきたい.学会に比べてより長い時間議論ができるため,実験の苦労話や,プロトコルの細かい悩み事などに至るまで,十分に話し合うことができるだろう.
限られた紙面でお伝えできることはそう多くないが,皆さんの参加を後押しすることはできただろうか.お金もかかり,4日という時間を費やす.昨今のコスパ,タイパ重視の風潮の中では,内情の知れない会に踏み入るのは心理的ハードルが高いかもしれない.しかし,それでも参加いただけた際には,きっと皆さんのご期待に沿えると確信している.若手諸兄姉にはこれを機に,ぜひ参加をご検討されたい.
本夏学は以下のスタッフにより企画運営中である.
校長:高橋大地(大阪公立 博士研究員),教頭:千葉元太(東大M1),会計:小川美季(日女M2),黒川南(神大D3),藤井真子(神大M1),講演:加藤修三(九大D3),竹森健太(九工大B4),中野敦樹(京産大D2),会場:晏晞(京大M2),肥塚雅人(神大M1),坂田桧(九工大 M1),鶴長慶(奈良女B2),福島加苗(阪大M2),広報:柏原智香(九大M2),村田彰久(神大M2),HP:加藤祐基(阪大B2),Twitter & slack:北川寛樹(阪大B2),ポスター&予稿集:青柳紗月(奈良女M2),奥田裕己(神大D3),アドバイザー:荒谷剛史(京大D4),臼井詩織(九大M修了),サポート:柴垣光希(北大M2)
本夏学の開催にあたっては,後援団体である日本生物物理学会をはじめ,共催の京都大学基礎物理学研究所,および多くの研究財団や企業の皆様方から多大なご支援とご尽力を賜りました.この場をお借りして御礼申し上げます.