2024 年 64 巻 6 号 p. 330-331
垣谷俊昭先生が2003年に中部支部を立ち上げられてから,昨年で20周年を迎えました.立ち上げの経緯では中部支部が含む地区の定義が議論されましたが,地理学的な定義に基づいて北陸地区も含むことで規約第3条の構成員が定められました.20周年を記念する2023年度中部支部討論会は初めて北陸の金沢大学で開催することができました.また,今回の研究室紹介では福井県立大学の向山さんに執筆いただきました.理事会では支部のあり方が議論されるなど改めて支部活動の意義を考えさせられました.中部支部は第40回年会(名古屋大学)での余剰金を原資にこれまで講演会や討論会を開催することができてきましたが,その他の支部では地域でのまとまりより研究分野としてのまとまりや発展を考えたいなどの意見があることも知れました.どのような形であれ,生物物理学会員が交流し,研究を深化・発展させることが重要だと思います.そのような活動への支援を期待したいです.
2023年度中部支部討論会は2024年3月19,20日に金沢大学鶴間キャンパス4号館大講義室にて,古寺哲幸さんを世話人として開催いただきました(http://bunshi4.bio.nagoya-u.ac.jp/~biophy-c/R5meeting.html).ここ15年間ほど中部支部講演会として開催してきましたが,20周年を機に昔の資料を探していたところ,最初は討論会として開催されていたことに気づきました(講演会は数名程度の講師を招いて開催していた).最初の数回ぐらいしか講演会は開催されませんでしたが,その後,討論会と講演会がごっちゃになってしまったようです.そこで,中部支部役員で相談して,20周年を機に原点に立ち返り,毎年の総会とともに開催している集まりは“討論会”であると名称を実態に合わせて変更しました.
前置きが長くなりました.初の北陸地区で開催された中部支部討論会ですが,北陸新幹線の開業とも合わさり,私自身もワクワクしながら参加しました.参加総数はこれまでで最高の122名(現地:117名,オンライン:5名)でした.口頭発表23件,ポスター発表53件と大盛況な討論会となりました.総会においては,垣谷先生からのメッセージを紹介しました(中部支部HPに掲載しています).また,懇親会では初代の幹事であった曽我部正博先生(現:金沢工業大学 教授)からご挨拶いただきました.金沢の地酒もたくさんご用意いただき,大変盛り上がりました(渡邉信嗣さん,ありがとうございました).今回,会場は市内にも近い保健学系の鶴間キャンパスと便利な場所で開催いただきました(荒磯裕平さん,ありがとうございました).
23件の口頭発表から,学生や若手研究者の方を対象に審査を行い,以下の5名の方に最優秀発表賞を授与することとなりました.生物物理は多様な分野からなるために受賞者を厳選するのは難しく,5名の対象者がいますが,各人ともに各研究分野での最優秀発表であったと思います.受賞者は,市川大悟(岐阜大学 修士2年),鈴木大晴(金沢大学 博士1年),吉村風汰(名古屋大学 学部4年),冨田尚希(名古屋大学 修士1年),Cong Quang Vu(金沢大学 特任助教)でした.
今回も昨年度に引き続き託児施設の利用補助を行いました.現地開催では託児施設の利用補助は若手研究者のサポートにおいて重要だと思います.現時点では中部支部会計で支出可能ですが,他の支部も関係すると思いますので,生物物理学会からの支援も期待したいところです.次回は名古屋市立大学の矢木真穂さんを世話人として開催予定です.

2023年度中部支部討論会@金沢
色使いにこだわり,お洒落でありながらシンプルで,研究内容が視覚的に伝わりやすい.そして,長く使うツールとして使いやすさも重視したホームページ(HP)がついに完成しました!
私たちの研究室は,2024年4月に名古屋工業大学大学院工学研究科の神取・古谷研究室から独立して発足しました(研究セミナーなどは引き続き神取・古谷研究室と合同で行っています).
研究室は以下の3つのグループで構成されています.
① 色覚タンパク質グループ
② Gタンパク質共役型受容体(GPCR)グループ
③ 動物視覚タンパク質進化グループ
HPで「色」にこだわった理由は,私が学生時代からヒトが色を見分ける視覚タンパク質の機能を解明する構造機能相関研究を行ってきたことにあります.
②GPCRグループでは,受容体と薬剤の相互作用を解析し,GPCR創薬を目指した研究を進めています.GPCRは細胞外から内在性リガンドや薬剤を受け取ると,受容体内部の水素結合系が組換えを起こし,それにより細胞内に情報を伝達します.私たちは,異なる化学構造を持つ薬剤が結合した際のGPCRの構造変化を,分子振動の変化として捉える研究を行っています.
また,③動物の視覚タンパク質のしくみを解明し,目の進化の謎に迫る分子進化研究にも取り組んでいます.ロドプシンは,動物に視覚をもたらす最初の分子であり,その多様性の構造学的起源を明らかにすることで,ロドプシンの分子進化を追い,目の進化を解明することを目指しています.
HP作成においても工夫を凝らしました.ロゴには「視覚=瞳」を連想させるデザインを採用し,研究室名の「KATAYAMa Lab」の最初の7文字は大文字,最後の1文字を小文字にしています.これは,7本の膜貫通αリックスと1本の短いαヘリックスから構成されるGPCRを象徴しています.ぜひHPをご覧ください.

研究室旅行の様子&HPのQRコード
福井県立大学は1992年に開学した比較的新しい大学です.令和7年度からスタートする恐竜学部が話題となっていますが,そのニュースをきっかけに本学の名前を覚えてくださった方が多くいらっしゃるのではないのでしょうか.所属するタンパク質科学分野には,私を含め4人の教員が所属し,実験室や学生居室を共有しつつ,各教員が独立して研究を進めています.
私たちのグループでは,体内時計を司る時計タンパク質の解析を通じて,24時間の時を測る分子機構の解明を目指しています.研究対象であるシアノバクテリアの体内時計は3種類のタンパク質(KaiA, KaiB, KaiC)から構成され,これら3種類のKaiタンパク質をATPと混合することで,試験管の中に体内時計が再構成されます.私は助教として所属していた分子研の秋山修志教授のグループにおいて,体内時計の24時間に相当する周波数を規定する主要な因子がKaiCただ1種のタンパク質に内包されていることを明らかにしました.この発見を受けて,現在は様々なシアノバクテリア由来のKaiCや,配列推定法を元に復元された祖先型KaiCの機能解析を通じて,体内時計の進化的起源を探求する研究を展開しています.さらに,シアノバクテリア以外の体内時計についても注目して研究を進めています.KaiCはシアノバクテリアや一部の微生物にのみ存在するタンパク質で,哺乳類や植物には見られません.他生物種の体内時計においてKaiCと類似の機能を持った時計タンパク質を探索することで,体内時計の多様な姿の実体に迫りたいと考えています.
2023年4月にスタートした私たちのグループは,私と学生が1名とまだまだ小規模ですが,これから興味深い成果を発信していきたいと思います.どうぞよろしくお願いします.

実験室にて,グループのメンバーと