2025 年 65 巻 2 号 p. 116-117
毎年夏に生物物理若手の会が開催する夏の学校(夏学)は,昨年で第64回を迎えました.近年では,学部生の参加が増加傾向にあります.昨年の夏学では参加者の3割弱が学部生でした.本稿では,夏学の『面白さ』について,学部低学年から積極的に参加してきた我々の視点でお伝えします.
私は量子力学を用いて生命の謎を解き明かしたいという夢を抱き,生物学と物理学の両方を学べる大阪大学理学部に進学しました.学部一年の春,夏学の存在を知り迷わず申し込みました.
夏学では,充実した時間を過ごすことができました.特に印象に残っているのは,講師の先生方との夜遅くまで続いた議論です.講義では得られないアドバイスを直接伺えるのは,夏学ならではの魅力だと思いました.また,わからないことをその場で質問でき先輩方が丁寧に教えてくれるポスターセッションも強く思い出に残っています.初歩的なイントロから最新の研究まで教えていただける機会は非常に貴重でした.
最先端の研究成果を知るだけでなく実際の研究活動やその雰囲気を体感できることも,夏学の大きな魅力だと思います.研究に対する熱や真剣な議論を目の当たりにし,私もこの輪の中に入れるように頑張りたいと思えました.
私は夏学に参加したことで生物物理学の世界に入りたいという思いが一層強くなりました.夏学に講演者として来られていた原田慶恵先生にその場で直談判し,翌月から原田研で量子センサーを用いた細胞内局所環境計測の研究を始めました.今後,生物物理若手の会や生物物理学を盛り上げていけるよう精進して参ります.
日本生物物理学会の“生物物理とは”というページによると,それは「生命の本質を物理的考え方,物理的方法で研究し理解しようとする学問」だそうです1).さて困りました,捻くれ者の僕は「じゃあ生命の本質ってなんじゃい」などと考えてしまうのです.細胞とか?もっと小さいタンパク質?それとももっと大きい器官?どれをスタートに置いても他のすべてにたどり着くのは難しいような……なるほどここではっと気が付きます.そうだった,スケールによって異なる一面を見せる現象を普遍的に記述するのが物理学の目的の一つだった,と.
個々のスケールで見える現象を記述したい,あるいは異なるスケールを繋ぐ法則を記述したい,というのは物理の自然な考え方だと思います.そしてその記述方法としてどれを選ぶかが本当に各人各様なのが,生物物理学の良いところなのではないでしょうか.それぞれのスケール固有の場所に飛び込む人もいれば,その境目の部分を探索しようと試みる人もいて,その道中に例えば情報なんていう新たな道具をどこからか拾って使ってみる人もいたり.
同じ目的地に向かって千差万別の異なる道を歩む若人たちが,年に一度顔を合わせてこっちはこんな道だった,そっちはどうだなどと語り合って広大な地図を描き進めている光景が夏学には広がっています.こんなに熱くなれる場所はなかなかないでしょう.
私は夏学には研究室に配属される前に参加しました.研究のけの字も知らなかった私は,開催日が近づくにつれ不安が募っていました.私なんかがバリバリ研究されている先輩方に混じるのは場違いじゃないか,学部の授業も理解し切れていないのに招待された先生方の講演を聞いて身になるのか,と心配になっていました.しかし夏学が始まると,前夜までの不安は杞憂だったことに気が付きました.
当日のプログラムではフラッシュトークなどの交流の場が数多く設けられていました.先輩方からは具体的な研究や進学の話を聞くことができ,自身の研究室選びや学部を卒業した後の進路について参考になりました.自分の興味のある分野の研究をしている先輩方,ましてや他大学の人たちとゆっくりお話できる機会は,学部生の私にとって貴重なものでした.
講演会には年齢や経歴,分野を問わず様々なプロフィールの先生方が招待されており,貴重なお話を聞くことができました.研究の話が興味深く面白いのは言わずもがな,先生方の熱い気持ちやメッセージが伝わってきてアカデミアに進みたい気持ちが刺激されました.
私は夏学を通して多くの出会いや学びを得ることができ,非常に楽しむことができました.あえて言い切りましょう,学部生こそ参加するべきだと.
掲示板で偶然目にした一枚のポスターが,私の大学生活を大きく変える契機となりました.それは夏学第62回への誘いでした.未知の場に飛び込む不安と期待を抱えながら初参加を決意し,緊張感の中で当日を迎えました.
意を決して参加した夏学では,学問の境界を越えた興味深い講演があり,それは生物物理の可能性を広げる視点を提供してくれるものでした.緊張が解けた夜には懇親会が催され,形式張らない対話を通じて参加者同士の距離が一気に縮まったように感じました.夏学で得た出会いは単なる交流を超えて,今でも続く大切な縁となっています.この初参加の夏学を楽しめたからこそ,二年目からはスタッフとして参加したいと思えました.
私は学部二年生という若輩者でスタッフを務めましたが,夏学の大らかで暖かい雰囲気のおかげで気負わず活動することができました.ここで特筆すべきは,夏学の開催に向けた一年以上にわたる準備活動で得られたスタッフ同士の絆です.この経験を通して得た繋がりは非常に強固なものとなりました.開催を支える責任感と連帯感は,人間的な成長にも繋がる貴重な経験となりました.
多くの学びと豊かな出会いをもたらしてくれた夏学は,私にとって挑戦と自己成長の出発点であるとともに,これからの人生における支柱となるものです.学び続ける姿勢を忘れずに,このかけがえのない経験と繋がりを未来への礎として活かしていきたいと思います.
友人からの誘いを受けて参加した夏学ですが,それは現在の私の探究心の原点となり,今なお心に深く刻まれた特別な経験です.そこではポスドクや大学院生の方々,さらには最前線で活躍する研究者の方々と共に,気兼ねなく議論を交わすことができました.その空間は,学問そのものへの純粋な探究心に満ちていました.このような経験ができることは,普段の教室では決して得られない夏学ならではの魅力だと思います.結局,私は生物物理学ではなく数学の道へと舵を切りました.そんな今でも夏学での交流の場は有意義なものだったと思っています.むしろ,そこで様々な人と話し,アカデミアの世界に触れたことは,非常に有用な経験となりました.研究者の方々が語る言葉やその視線の先には,自分がまだ知らない広い世界が広がっていることを感じさせられました.同時に,自分がどれだけ未熟で,しかし可能性に満ちているかということにも気付かされ,学問を追求する意欲をさらに高める大きなきっかけとなりました.
これらの経験は,数学の世界で自分の可能性を追求する中でも,そこに挑戦し続ける原動力となっています.私たちが目指す先には,どんな風景が待っているのか.そんなことを考えると,とてもワクワクします.
夏学の魅力はここでは語り尽くせません.本年は,第65回生物物理若手の会夏の学校が関東地方で開催されます.是非,夏学に飛び込んでみてください!そこには充実した時間が待っていますよ!